プロフィール
1973年 いけばなアンデパンダン展/練馬・豊島園
1980年 現代いけばな美術館1980/銀座・松屋
1993年 個展・花夢幻/銀座・資生堂ラ・ポーラ
1995年 都立公園野外いけばな展’95/東京・日比谷公園
2000年 花劇/江戸東京博物館ホール
2002年 いけばな伊勢物語展/増上寺
2012年 大地の芸術祭/越後妻有(’06・’09出品)
2016年 つなげよう花の心展/増上寺(’18・’19・’20出品)
2017年 第1回新いけばな主義/横浜BankART Studuo NYK
2019年 第2回新いけばな主義/城南島
第3回
「花ーペット・2021 ~追憶の時空~」
バラ 霞草 ペットボトル 自転車 脚立 傘
今回の作品は過ぎ去ったことに思いを馳せるという情緒的な視点からのスタートでした。あんな事こんな事の記憶を手繰りで綴りながら小さな時空の中で行きつ戻りつの記憶探し。そこで素材として手にしたのはやっぱりペットボトルだったというわけです。と言うのもここ数年〈永遠の円陣〉〈この指とまれ〉などペットボトル作品を続けて、更に昨年秋の東京、芝の増上寺でもペットボトル300個の〈夜の虹〉を出品。今のところ続けてペットボトルの制作に取りつかれているという状態です。何故ペットボトルなのかの答えの一つにはそれが素材として取り組むほどに多様な変容を見せてくれる不思議な魅力に溢れているからだということ。今回は約4,000個の大量ペットボトルを縦に潰して平面に構成したシンプルな制作工程。各地から届けられたペットボトルをコツコツと並べながら追憶の時空に浸りきって仕上げた作品。自転車の前かごに一束の花の命を添えて完結です。
撮影 伊奈英次
第2回
「花室」
ダンボール材 木材 紫陽花 枯れ物 荷札 他
心を空に向けると今も鮮烈な光の記憶としてよみがえる作品がある。古の頃、都の地を守る為に将軍像を埋めたという所縁の将軍塚。京都を訪れる人の多くが足を向けるだろう青龍殿の大舞台にその作品は置かれていた。デザイナー吉岡徳仁が2011年の第54回ヴェネツィア ビエンナーレ国際美術展に発表したガラスの茶室〈光庵〉。古都を一望する特別な空気感の中に放たれていた求心的なメッセージ。いつか自分の室を作ろうという芽を発芽させてくれた一瞬がそこにあったのかと思いつつ構築した今展の一室。茶室ならぬ〈花室〉という造語をテーマにした室内宇宙の設え。生命・水・枯れ・時空・呼動・光・透明・茶室・寺・窓・迷い・悟り・行き違い・出会い・無・破れ・つかの間・などの気になる文字を揉みくちゃにして絞り出した形がこの花室。安普請で天井の無いエコ素材の吹き抜けの佇まい。儚い仕組みの仕上げの中で静と動の花時間を見つめることが出来ればと思う。
撮影 伊奈英次